2025年12月06日 更新
星海社新書 刑事コロンボ研究 中
2025年12月16日(発売日はお住まいの地域によって異なります。)
「いつ見ても永遠に新しい」刑事コロンボの魔術を解き明かす
「刑事コロンボ」は、〈テーマ曲がないのに、テーマ曲とされた曲が時代を超えて世界的に有名〉っていうアクロバットが成立しちゃって、かつそれがアクロバットからは程遠いゆったりした暖かい曲です。こんなアンビバレンス、人類史上「刑事コロンボ」だけじゃないかと思いますね。この「二重底になってて、いきなり気がついてえー! と思うけど全然気にならない」といった気持ちよく騙されているような感覚は、コロンボイズムの根底を支えていると僕は査定します。
「コロンボのカミさんって、結局いることになったけど、最初はいないって思われてたんだよね」「コロンボって、虐められたり、舐められたりするけど、元ワルなんだよね」「コロンボって、話がよく出来てる時と無茶苦茶な時あるのに、あんま気になんないよね」「コロンボって、とにかく芝居するよね。だから本気かどうか分かんないよね全部」──こうした連合が、「コロンボの有名な主題曲って、コロンボの主題曲じゃないんだよね実は」という途轍も無い事実から円環的に「コロンボって、いるけど、いないかもね」という臨界まで、全部繫がってるとしか思えないんですよ。
ここに「いつ見ても永遠に新しい」という惹句が翩翻と旗めく訳ですが、こんな不老長寿の魔法みたいな事って、作品の完成度が高いだけじゃ絶対に得られません。この本は、その魔術の仕組みを楽しみながら考える本です。
*著者プロフィール
菊地成孔(きくち・なるよし)
1963年千葉県生まれ。菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/菊地成孔クインテット/ラディカルな意志のスタイルズ、のリーダー。また、自らが代表を務めるギルド〈新音楽制作工房〉を主宰して多彩な音楽活動を行うとともに、文筆家、大学講師としても旺盛な活動を行う。劇伴音楽の代表作に『LUPIN the Third 峰不二子という女』OST、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』OST、『岸辺露伴は動かない』OST、批評家としての代表作に『ユングのサウンドトラック』(河出書房新社)、『クチから出まかせ 菊地成孔のディープリラックス映画批評』(集英社)、『服は何故音楽を必要とするのか?』(INFASパブリケーションズ)、『M/D マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究』(大谷能生共著、エスクァイア・マガジン・ジャパン)など多数。




